異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
「命令と法の遵守は?」
「集団生活の秩序を守るためよ。それも人は子供の頃から集団の中で暮らすうちに自然に学んでいくものでしょう? 生まれてすぐに成人として働かなければならないロボットには自然に学んでいる時間がないから」
よし。だったらオレには絶対命令なんてなくてもいいじゃないか。
「オレは前世で人として二十五年間過ごしてるわけだし、絶対命令を外してもらうことってできないのかな?」
超法規的措置を期待して提案してみると、リズはにべもなく一蹴する。
「ダメよ。法と社会の秩序を守る立場にある警察局が法に背くわけにはいかないわ。だいいちあなたの前世が人だったなんて、どうやって証明するのよ」
確かにそうだけど、特に証明なんかしてないのに、あっさり信用した人から言われたくない。
「でも、それじゃあ、また班長の命令無視しちゃって怒鳴られるかもしれないじゃん」
嫌われることは百歩譲るとして、自分の意思に反する行動で怒鳴られるのは理不尽な気がする。
なおも食い下がるオレに、リズはこともなげに言う。
「命令を無視しないようにすればいいじゃない」
「だからどうやって?」
「あなたが常に最前線に立てばいいのよ。あなたが盾になってれば、みんなに危害が及ぶ心配はないわ。人命を優先して命令を無視することもなくなるはずよ」
「え……」
いやいやいやいや。そんな簡単に危険を一身に受けろって。
戦争や紛争とは無縁の平和ボケした日本の営業マンに、それってハードル高すぎるだろう。
いくら体が強化機械で簡単に死なないとはいえ、死ぬ目に遭うのは前世の本能がためらう。
班長に怒鳴られる方がよっぽど怖くない。
けど、ロボット捜査員が導入された経緯を考えると、そうするしかないんだろうなとも思う。そういえば、自分の身を守るためにも絶対命令が働くんだっけ。
だったらちょっとは気が楽かな。
危険手当は出るんだろうか、とふと思ったが、考えたらオレ、備品だからそもそも給料さえもらってなかった。