異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
国家機関の不祥事が世間を騒がせた事件から、あわただしく一週間が過ぎた。
オレのシークレット領域に保存された人格形成プログラムのソースコードも無事に前国王陛下に預けられたが、バージュモデルのライセンスそのものは科学技術局が継続して管理することになった。しかし人格形成プログラムの改変は、原則として従来通りで、やむなく改変しなければならない場合は、王室の許可が必要となる。基本的にバージュ博士亡き後、今までの十五年間と変わりないということらしい。
違法だとグリュデに指摘された古いライセンスは、事件翌日の夕方には異例の早さで申請許可が下りた。
どうやらグリュデが独断であれこれ画策していたらしく、科学技術局側も寝耳に水状態だったらしい。面倒からはさっさと縁を切ってしまいたかったようだ。
あの日からオレは夕方から翌朝までは研究室にいるが、このところ事件もないので昼間は事務室か各種訓練場を渡り歩いている。
オレが教える立場になる新人ロボット捜査員は、事件の翌日オレのいない間に、すでにリズの研究室に来ていた。毎日研究室と行き来しているオレも、その姿を見たことはない。
筋力リミッターや各種捜査用機能の実装と調整で、リズと一緒に作業場にこもっているからだ。起動しているのかどうかも知らない。
新人ロボットの調整に熱中しているリズは、いつものことながら食事を忘れるので、昼のチャイムがわりにオレは研究室に戻ることにしていた。
ちょうど部屋に入ったとき、作業場から出てきたリズに出くわして、ちょっと面食らう。いつもオレが声をかけるまで出てこないのに。