異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
「嫌悪感を発してる?」
「いいえ。落ち着いていますが、今のシャスさんのように特に昂揚してもいません」
嫌悪感を発していないだけ、昔よりはかなり友好的だとは思うけどな。
「私は、班長に嫌われているんでしょうか?」
「い、いや。全然大丈夫。班長は大人だから、おいしいもの食べたくらいじゃはしゃいだりしないだけだよ」
まさかロボット全般を嫌っているとは言えない。オレなんか目の前で「嫌いだ」って宣言されたからな。
それでも最近はかなり歩み寄っているとは思う。ロティのお茶も断らなくなったし。
ただ、相変わらずオレを見る目は不愉快そうだけど。ダレムに対してはそうでもないんだよな。
二課長の命令かもしれないけど、時々休みの前日にダレムを連れて帰ることもある。
ダレムもマスターである班長と信頼関係を深めるようにと二課長から言われているらしい。だから班長がロボットに対して無愛想なこともあらかじめ聞いている。
だったら「嫌われている」と感じるほどのなにかがあるのか?
オレは恐る恐る尋ねてみた。
「もしかして、嫌いだって言われたとか?」
「いいえ」
さすがにそれはなかったか。
人間だったら「気のせい」で済むんだろうけど、ロボットのダレムはそのときの状況や班長の生体反応と言動を分析した結果だから、計算間違いである明確な根拠を提示しなければ納得しないだろう。
すぐに結論は出そうにない。そんな深刻な話しながらじゃ、飯がまずくなる。
なんてダレムに言ってもきょとんとされるだろうから、オレは強引に話を切り上げた。
「班長のことはあとでゆっくり話を聞かせてくれ。今は食事に集中したい。味や食感も分析しなきゃならないし」
「わかりました。私も食事を楽しみます」
ダレムは微笑んで頷き、優雅にフォークを操り始めた。
あまり食事をしたこともないのに、フォークの扱いはリズよりよほどうまい。さすがロボット。
その後は食事をしながら、ぬかりなく分析し記録をしつつ他愛のない世間話で笑ったりした。
幸い緊急指令が出ることもなかったので、オレたちは昼休憩を丸ごと満喫できた。平和なことはいいことだ。