異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
何も事件がないときのリズは、週に一度の定例会議に出席する以外、一日中研究室にいる。作業場にこもっていたり、コンピュータを操作していたり、それなりに忙しそうだ。
特務捜査二課専任の科学者はロボット担当のリズと捜査機器担当がもうひとり常駐している。あとは必要に応じて本部から派遣されるらしい。
備品のオレはというと、備品棚であるこの研究室でおとなしくしているほかない。なにしろマスター命令で、リズの許可なく研究室を出ること、コンピュータを触ること、作業場に入ることは禁じられている。それはムートンも同様だけど。
はじめの一週間は警察局のことを学んだり、捜査機器の使用方法を覚えたり、逮捕術の訓練とか、色々とやることがあった。
だが、知識に関しては一度目を通しただけで内蔵メモリに登録されるし、体で覚えることもコツを掴んでしまえば同じくメモリに登録されるので、人間のように復習しなければ忘れてしまうということがない。
人間やってるときに、こんな能力欲しかったとつくづく思う。
おかげで事件のない日はヒマになってしまったのだ。
オレはヒマだがリズは仕事をしているので邪魔するわけにもいかない。それにいつ出動命令が下されるかわからないので、寝ているわけにもいかない。
最近はネットワークに接続して、国立図書館の閲覧可能な蔵書を、少しずつ順番に読むことにしている。一気に読んでしまったら、またヒマになるからな。
オレもヒマだが、ムートンもそれほど忙しいわけではない。朝夕の二回、部屋の掃除をする以外に彼の仕事はないようだ。
リズが休んでいいと言うまで、彼は一日中部屋の隅で球形の立体パズルを組み立てたり崩したり、一人遊びに興じている。別におもしろくてやってるわけじゃないとは思うけど、よく飽きないなぁと関心はする。
会話機能充実のために話しかけてやってくれと言われてるので時々話しかけると、案外難しいことを応えたりするので驚くこともある。
仕事熱心で愛嬌があって、ほんの少しだが成長も見えるムートンを、リズがかわいがっているのはわかる気がする。