異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
ただ、ダレムが感知した不安が少し気になる。恋人に会いに行くなら緊張や焦りはわからなくもないが、なにを不安になることがあるんだろう。
めったに会いに行かないから嫌われたらどうしよう。とか? そんなタイプじゃないよな、班長って。いや、あくまで私見だけど。
なんとなく事件の香り。
事件未満の不穏な動きを個人的に探っているとか。その方が現場主義の班長にはしっくりくる。
だとしたら、ダレムの護衛なしにひとりで行動するのはやっぱり心配だ。
班長としてはあいつと同じ名前にしたダレムが同じ目に遭うのは痛いだろう。オレが撃たれた時でさえ、普段では考えられないほど冷静さを失っていた。
それでダレムに絶対ついてくるなと命令したのかも。
ダレムが命令で動けないなら、オレがこっそり真相を突き止めてみよう。それでこっそり恋人に会っているだけだったとしたら、それはそれでダレムも安心できるだろうし。
「今度はいつ班長の家に行くかわかるか?」
「今日です」
オレは警察局のサーバにアクセスして、特務捜査二課の勤務スケジュールを確認する。確かに明日班長は非番だ。
「よし。おまえの代わりにオレが出かけた班長を警護するよ」
「班長はシーナが警護するのを許してくれるでしょうか」
「おまえがダメなことをオレに許可するわけないだろ。だから内緒だよ。オレが警護していることは誰にも話すなよ」
「わかりました」
ダレムはまだ子供と一緒なので、なにごとにも素直に反応する。人間だったら、本人の望んでない警護を勝手にするのはどうかとか考えるんだろうけどな。
ダレムにとっては班長の意思よりも、身の安全の方が優先順位は高いからだろう。
けれど人間のリズは、やはりちょっと眉をひそめて言う。
「興味本位で詮索しようとしてるんじゃないでしょうね?」
「そんなんじゃないよ。班長がなにか危ないことしてるならオレだって心配だし」
「そうだとしても、あなたがあまり首を突っ込むと、ラモットさんに煙たがられるわよ」
「わかってるって。だからこっそり見守るんじゃないか。でも万が一班長に見つかったらリズにおつかい頼まれたことにするから、口裏あわせといて」
「しょうがないわね」
リズは渋々了承し、夕方にオレが研究室から出ることを許可した。