異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
緊急指令のない平和な一日が終わる。グリュデが逮捕されてから、確かにロボット絡みの事件は減った。
おかけでオレの出動がない日が結構増えた。もう寿命の心配はないけど、ヒマすぎるのもなんか微妙な気分。いや、平和なのはいいことだけど。
夕日が研究室の中をオレンジ色に染める中、最後のピースをはめこんだムートンが夕方の掃除のために定位置から移動を始めた。
終業の合図はだいぶ前に鳴っている。けれど相変わらずリズはコンピュータに向かって仕事を続けていた。今日は何時まで働くつもりだろう。
半ば呆れながらぼんやり見つめていると、出入り口から来客を告げるアラームが鳴った。入り口横の液晶画面を、視覚を拡大表示に切り替えて確認する。
班長だ。オレを見ているわけじゃないからか、不愉快そうにしていない班長の素の表情は、なんか新鮮な気がする。しかも帰宅前だから制服じゃないし。
リズが応答して扉を開き、出入り口に向かった。オレとダレムも立ち上がってその後に続く。
班長はオレを見るなり、見慣れた不機嫌顔になった。うん。こっちの方が班長だって気がする。
オレから視線を逸らした班長は、リズに尋ねた。
「リズ、ダレムの調子はどうだ?」
「特に問題はありません。最近は会話機能も向上してきたようです」
「会話機能?」
そう言って班長は眉間にしわを刻みながら、オレを見下ろす。言いたいことはなんとなくわかる。
リズは察したように釈明した。
「大丈夫です。シーナのまねはしないように言い聞かせてありますから」
いつものように天使の微笑みで相槌を打つと、班長もいつも通り不愉快そうに目を逸らす。
グリュデに会話能力を絶賛されたのが、なんだか小馬鹿にされているようでリズに尋ねたら、実は本気で感心していたらしいことが判明した。