異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
通常、ロボットは相手によって言葉遣いを変えたりはしない。学習能力の高いバージュモデルでも、修得するまでにはかなりの時間がかかるのだ。
というのも、人間が無意識とかごく自然に行っている判断をロボットにさせようと思うと、その判断材料をすべて明確なデータとして与えなければならないからだ。
人は他者と話をするとき、相手の立場や地位、年齢、自分との上下関係はもとより、その人の性格やその時の感情、自分との親密度など多くのデータを元に、無意識に近い状態で言葉遣いや口調を変えている。
シャスや二課長のようにロボットに詳しくない人は、自分が無意識にやっていることなので、別にすごいことだとは思わないようだ。
けれどグリュデのように詳しい人間には、起動して1ヶ月足らずのロボットに言葉を自在に切り替える判断力があるのは驚異だったのだ。
オレのまねをして誰彼お構いなしにタメ口をきいてはマズいということで、ダレムには厳しく言い渡されている。
シーナはいいけどダレムはダメ。ではダレムが納得しないので、まずは対人スキルを優先し、言葉遣いはその後ということにしているらしい。
ヴァランも丁寧語だったし、ムートンは元々そんなに高度な言語能力はない。オレが知ってる限りではロティがオレとダレムに対してだけタメ口だ。
ロボットの同僚フラグでも設定してるのかもしれない。接客も仕事にしているロティは、ロボットでもお客様にタメ口きくわけにはいかないからな。
いろんな人と多く接しているロティだからこそ、言葉遣い判断力も磨かれているのだろう。
リズの言葉に班長は納得したのか、わからないくらい小さくホッと一息ついてダレムを促した。
「ダレム、帰ろう」
「はい」
ダレムは笑顔で頷いて班長に従う。
「おつかれさまでした」
オレとリズは敬礼でふたりを見送った。