異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


「もしかして欲情しちゃった?」
「ちが……っ!」

 体温、脈拍急上昇。耳たぶも真っ赤。これだけ極端な反応はかえっておもしろい。

「オレ性欲ないから、気付かなくてごめん。でも君が求めるなら、いつだって応えるよ。どうしてほしい?」
「放して」
「うそつきだなぁ」
「うそじゃないわ」

 やべぇ。声がふるえてる。これ以上からかったら泣く。

 オレが離れようとしたとき、リズの感情がテレや戸惑いから一気に怒りにシフトした。

 マジ、やべぇ。

「わかった、ごめん! 放す放す。放します、マスター!」

 慌ててリズを放し、遠ざかろうとするオレの耳に、リズの低い声が響く。

「シーナ、命令よ。痛覚レベルプラス三負荷」


 マスターの命令受理。
 痛覚レベル+3負荷。


「いてーっ!」

 無条件でいきなり来るとは。

 駆けだしていたオレは、のけぞった拍子にバランスを崩して床に転がる。そこへ掃除のために部屋を往復していたムートンがやってきた。

「シーナ、シンロヲボウガイシナイデクダサイ」
「はーい」

 容赦ない。自業自得だけど。

 のそのそと四つん這いでムートンに進路を譲る。そのまま床に座ってムートンを見送った時、頭の上に影が差した。
 見上げると目の前には腰に両手を当てて不愉快そうに見下ろすリズが仁王立ちしている。

「研究室でそういう悪ふざけは禁止されてるでしょう?」
「はい。もうしません、マスター」

 居住まいを正して素直に頭を下げたものの、なんか釈然としない。


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