異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
ダレムの通信を元に地図で検索した班長の家は、官庁街からも商店街からも少し離れた第二居住地区の真ん中あたりにあった。
そのあたりは集合住宅が立ち並ぶ、地区名通りの住宅街だ。稀にリズの家のように昔からある一戸建ても混ざっている。
班長の住まいは三階建て集合住宅の二階だ。
オレが現場に到着したと同時にダレムから通信が入った。
「シーナ、今どこですか? 班長が出かけました。建物の入り口から離れてください」
「了解。今着いた」
オレが目標の斜め前にある公園の木陰に身を隠したとき、建物の出入り口から班長が出てきた。
少し急ぎ足で左に進んでいく。なるほどダレムが言ったようにわずかな焦りを感じる。
なんだろう。時間制限でもかけられてるみたいだな。
気配を殺して十分に距離を置いて、オレは班長の後を追った。
遠くまで行くのかと思っていたら、班長は三軒先の庭付き一戸建ての前で立ち止まる。腰の高さまでの低い柵が、草花に覆われた庭の周りをぐるりと取り囲んでいて、クランベールにしてはレトロな作りの家だ。
門柱の前に立った班長は眉間にしわを寄せる。なぜか焦りは苛々へと変わっていた。
そしてその感情を叩きつけるように、門柱に取り付けられた呼び鈴を連打する。
少しして玄関の扉が開き、気怠げな声を発しながら班長と同年代と思われる男性が姿を現した。
オレは聴覚の感度を上げて、少し離れた建物の陰からふたりの会話に耳をそばだてる。
「はいはいはい。何度も叩かなくても聞こえてるから」
「だったら、さっさと出てこい。オレが来ることはわかってただろう」
友達なのかな。こっそり会ってる恋人じゃないみたいだし、なにか事件の容疑者ってわけでもなさそうだ。