異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
研究室内で仕事のないオレだが、図書館の本を読む以外に、勝手に自分で仕事を見つけた。
日に数回、リズにお茶を淹れて出すことだ。といっても、来客コーナーの片隅にある自動でお茶を淹れてくれるマシンからカップに注ぐだけだけど。
リズは放っておくと食事も忘れて作業場にこもっていたりする。時々息抜きさせないと、ヒマを持て余しているオレがなんだか後ろめたい。
なにより、リズが食事を忘れていると、オレも食事にありつけないのだ。
案の定、今日も十二時を回ってずいぶん経つのにコンピュータの前から動こうとしない。
オレは来客用の机に二人分のお茶を置いて声をかけた。
「リズ、昼過ぎてる」
「あら、そうだった?」
「さっきチャイムが鳴っただろ」
「聞こえてなかったわ」
「ったく……」
リズは机の引き出しから白いボトル容器を取り出し、それを持ってこちらにやってきた。
オレの向かいの席に着いたリズは、ボトルを傾けて手のひらに受けたオレンジ色のカプセルを二つ口に放り込み、お茶でのどに流し込む。そしてオレの方にボトルの口を向けた。
「はい。あなたも」
「ん……」
オレもカプセルを二つもらって飲み込む。
これがリズの食事だ。そしてオレも同じ食事を摂る。
人間らしさを追求したバージュモデルは食事を摂る事ができる。そして摂取した食物は跡形もなく分解されてエネルギーに変換されるのだ。
精巧な体はエネルギー消費量も多く、夜の間にケーブルでフルに充電しても午前中で三割は減少している。それを補うための食事だ。
出動時にはいつでもフルパワーを発揮できるようにしておかなければならないから、エネルギーの補充は不可欠とはいえ、ケーブルを繋ぎっぱなしにもできないからだ。
ていうか、犬じゃあるまいし、繋ぎっぱなしは勘弁して欲しい。まぁ、生き物ですらないから、犬以下かもしれないけど。
それに内蔵バッテリがフルの状態だと、食事は分解されずに体内タンクに蓄積されたままになるので、予備のバッテリも兼ねているのだ。