異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
元々食事を摂る必要がないとはいえ、カプセルが食事って味気ないと常々思っている。
このカプセルはクランベールで普及しているサプリメントで、必要な栄養が摂取できると共に、空腹も満たしてくれるらしい。「らしい」というのは、オレは空腹自体感じないので、そこはわからないのだ。
クランベールにも普通の食事はある。サプリメントは忙しくて食事を摂る暇のない人が体調を崩したりしないようにと開発された。そのため地球上のサプリメントのように栄養補助ではなく、食事の代用として摂取できる。だから忙しくないのに面倒くさがりな人の間でも重宝されているようだ。
「リズって、家でもこのカプセル飲んでんの?」
「えぇ。家にいる時間ってあんまりないから、台所を汚したくないのよ」
「たまにはおいしいもの食べたいとか思わないわけ?」
「あんまり興味ないわ。昔からサプリだけだったし。食事なんかに時間をかけるなんてもったいないもの」
「食事なんかって……」
食べることに興味のない女って珍しい。
オレのいた会社の女子社員は、得意先営業が手土産に持ってきたお菓子にキャーキャー言ってたし、おいしいレストランやケーキ屋の情報には敏感だった。オレの周りだけ特別そうだったというわけじゃないと思う。
「昔からサプリだけで、よくそんなに大きく育ったよな」
「え? 私って全然大きくないと思うけど?」
「いや、身長じゃなくてその……」
きょとんと首を傾げるリズの胸に視線を向けると、すかさず額にグーパンチが飛んできた。
完璧に油断してた。めっちゃ痛い。目に涙がにじむほどに。
思わず額を押さえて悶える。
てか、こんな無駄にリアルな人間らしさってなんのために必要なのか意味がわからない。
「……ってぇ。精密機械をグーで殴るなよ」
「そんなヤワに作ってないわ。どこ見てんのよ。それにあなたの頭脳は頭部には入ってないわよ」
それは一応知ってる。頭部には各種センサ類がぎっしりで、人工知能は胸の真ん中あたりに入っている。