異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 手をついた診察台に視線を向けると、頭の中にまた幾何学模様の文字が浮かんできた。目を閉じていたときは気づかなかったが、視界ではなく頭の中に浮かんでいるようだ。


 材質スキャン。
 人工樹脂。硬度52


 なんなんだ、さっきから。
 そんなことより、どっか鏡はないのか? あと、せめてパンツが欲しい。

 診察台の端から両足を垂らして、あたりを見回す。ずいぶんと狭い部屋だ。窓はない。左手の壁にスライド式の扉らしきものがある。
 目の前の壁際には戸棚があって、三歩くらい歩いたらたどりつけそうだ。診察台の横には機械工具らしきものが載ったワゴンがあった。他には何もない。
 どうやらこの部屋の中に手っ取り早く覗ける鏡もパンツもないようだ。
 裸で外に出るのは気が引けるが、とりあえず部屋の外の様子を見てみよう。
 そう思って診察台から降りた途端、腰の後ろを何かに引っ張られた。

「うわっ」

 体が前のめりになり、オレの体重に耐えきれなかったのか、腰を引っ張っていたものが突然外れる。その反動でバランスを崩し、そばにあったワゴンをひっくり返してしまった。

「なんなんだ、いったい……」

 振り向くと、診察台の上には電源プラグのコードがのたくっている。引っ張られた腰に手を当てると、皮膚が四角くめくれて穴があいていた。
 慌てて触った手を目の前で確認する。血は出ていない。なんで?
 頭の中にまた文字が表示された。


 ライン通電終了。
 内蔵バッテリに切り替え。
 バッテリ電力70%。


 にわかに信じがたい結論が頭の中に浮かぶ。もしかしてこの体……。
 呆然と手のひらを見下ろしたとき、突然扉がスライドした。


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