異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
お茶を飲み干してリズが席を立ったとき、部屋の隅で立体パズルに興じていたムートンが声を発した。
「リズ、オナカガスキマシタ」
「はーい。今行くわ」
リズはムートンの元に行き、充電用のケーブルを繋ぐ。そしてムートンの頭をポンポンと軽く叩いた。
ムートンはバッテリ残量がわずかになってくるとリズを呼ぶ。
自在に動く五本指の手を持っているし、立体パズルを楽しむ知能も持っているから、マスターのリズが命令するなりプログラムするなりすれば、自分で充電することは可能だ。そんなこと日本にいる床掃除しかできないロボットだってやっている。
けれどリズはあえて知らせるだけにしているらしい。そのおかげで昔から何度もムートンに救われたという。
リズが言うには、人は誰かに必要とされていたい生き物なのだ。
必要としてくれる相手への好感度は高くなるし、そういう誰かがいれば挫折しても頑張ろうという気になる。
感情を持たないロボットに自主的な愛情表現は期待できないけれど、人に「お世話をしなければ」と思わせることでロボットに対する愛着が湧いてくるのだ。
もっとも、ロボット大好きなリズにはそんな小細工必要ないだろうと思う。ムートンを見つめる瞳が思い切り愛を語ってるし。明らかにオレを見る目と違っている。
器はリズの愛するロボットでも、中身がオレだからなのか。やっぱり他のロボットとは区別されてるよな。
青い目玉を点滅させながら、おとなしく充電中のムートンを見つめてオレは問いかけた。
「ムートンって随分年季が入ってるけど、いつからいるんだ?」
「ここに来たのは一年前だけど、生まれたのは十七年前よ。その時から一緒にいるわ」
「へぇ。子供の頃から一緒にいたなら兄弟みたいなもんか」
そりゃあ、愛着もあるだろう。
オレが納得していると、リズはクスクスと笑い始めた。
「兄弟じゃなくて親子よ。ムートンは五歳の私が作ったらしいの」
「五歳でロボット作った!?」