異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
天才少女!? それともクランベールの子供はみんなそんなもんとか?
目を見張るオレに、リズは苦笑混じりに言う。
「六歳より前のことって一切覚えてないからよくわからないんだけど、そうだって聞いたわ。でも大半は手伝ってもらったのかもしれないわね」
「リズの親も科学者?」
「両親は私が二歳の時事故でふたり一緒に亡くなったらしいわ。私は引き取ってくれた大叔母と一緒に暮らしてたの」
リズの大叔母は当時百歳近い高齢だった。とはいえクランベール人の寿命は科学の発展に伴い地球人よりも長い。平均寿命は百二十歳で、長生きな人は百五十歳まで生きるというから、百歳くらいでも子供を引き取るのに問題ないくらいの元気はある。
さすがに現役ではなかったものの若い頃はバイオ科学者だったという。
「バイオなら畑違いじゃないか?」
「大叔母はそうだけど、一緒に住んでたその友人が機械工学の博士だったのよ。あまりよく覚えてないけど、優しいおじいちゃんだったわ。あなたも名前は知ってるはずよ」
「へ? 有名人?」
と言っても、クランベールの歴史はまだ学び始めたばかりなので、オレが知ってるとしたら「超」のつく有名人なはずだが。
リズは自分のことのように誇らしげに胸を反らす。
「ロボット工学の第一人者でバージュモデルの開発者、ランシュ=バージュ博士よ」
「えぇ!?」
さすがにオレも知ってる。
彼も当時はかなり高齢だったはずなので、リズの大叔母共々今は亡き人だ。子供の頃わずかな期間とはいえ、共に暮らし一緒にロボットを作ったということは、リズは歴史に名を残すロボット工学博士の直弟子のようなもの?
なんか、すげーっ。だからオレって超高性能なんだって、思い切り納得する。
驚きのあまり呆けていると、室内に設置されたスピーカーから緊急召集のメッセージが流れた。
—— 緊急指令。ラフルール港湾地区にて盗難事件発生。ヒューマノイド・ロボット関与の疑いあり。特務捜査二課所属局員は第三会議室に集合してください。
「行きましょう、シーナ。仕事よ」
「了解」
オレとリズは急いで出口へ向かう。リズは出口で振り返りムートンに笑顔を向けた。
「ムートン、行ってくるわ。留守番をお願いね」
「イッテラッシャイマセ」
ムートンに見送られ、オレたちは会議室に向かった。