異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 ガリウス班長が苦笑しながら、やんわりと指摘する。

「いや、君は機動捜査班の指揮を執らなきゃならないだろう?」
「どうせ被疑者が特定されるまで指揮することなど何もない。それにシーナへの命令はマスターの次にオレの優先順位が高いんだ。他の奴よりオレの方が言うことを聞かせられる。なにしろシーナは命令違反の前科があるしな。オレには監督責任がある」

 いやいやいや、そんな犯罪者のように言わなくても。だいいちあれって絶対命令のせいで、オレが自発的に命令に背いたわけじゃないし。

 だが、ラモット班長の言うことには一理ある。命令の優先順位は絶対命令の次にマスターであるリズ、その次にラモット班長が設定されている。他の人は「人間」というものすごく大雑把な一括りになっているのだ。他の人が確実に命令を実行させるためには、いちいちリズかラモット班長を経由しなければならなくなる。
 設定を追加すれば済むが、システム領域に干渉することになるので色々と面倒な手順を踏まなければならないのだ。その手間を考えれば、強制命令権限を持っているラモット班長がコンビを組むのが、すぐに動ける分効率的ではある。
 ラモット班長の言い分に、ガリウス班長は渋々了承する。

「確かにもう三日も経過しているから、これ以上無駄な時間を費やすのは得策ではないな。君に任せることにするよ」
「承知した」

 今後の捜査方針は、ラモット班長とオレの聞き込み結果を待って決定することとし、臨時の捜査会議は終了した。
 ラモット班長の留守はフェランドが代理を勤めるらしい。リズはいつものようにオレをモニタリングするために通信司令室に待機することになる。

「ラモットさんの言うことをよく聞いてね」

 そう言ってリズはオレの肩をポンと叩くと、通信司令室に向かった。
 子供じゃねーっての。

 会議室を出て皆が立ち去った後、廊下にはオレとラモット班長だけが取り残された。班長はいつものごとく不愉快そうにオレを見つめて短く促す。

「行くぞ」
「はい」

 カベルネの店主にはガリウス班長から、捜査協力の要請であらかじめ連絡が入れてあるらしい。
 オレは班長の後ろについて一緒に警察局の建物を出た。

< 36 / 285 >

この作品をシェア

pagetop