異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
ただ、カベルネの店主は法に背いたことにはなるが、拘留されたりはしない。罰金を支払い、今後バージュモデルのヒューマノイド・ロボットは所有できなくなる。
バージュモデルである盗品の彼女は、主の元に帰れなくなるのだ。
「彼女はどうなるんだ?」
「人格が破壊されてるから、記憶領域を全部リセットすることになるでしょうね。その後は中古ロボットとして新しい主人を待つことになるわ」
「そっか。今度はいい主人だといいな」
どんなに人間そっくりでも、オレたちロボットは人間じゃない。店で買ってくれる主人を待って、買ってくれた主人はどんな人でも受け入れるしかない。
感情のないノーマルモデルなら、なにも思わないのだろうが、バージュモデルの中古品は色々思うところがあるのではないだろうか。中古ってことは主人と別れたってことだから。
なんかペットの気持ちが身にしみてわかった気がする。
彼女がろくでもない主人に買われて違法な仕事に従事させられた忌まわしい記憶をすべて失ってしまったのは、せめてもの救いだったかもしれない。
まぁ、あの店主もやらせていた仕事内容はアレだけど、ロボットに対する態度はそんなに酷くなかったから少しはマシだったのかな。
オレの主は善良なロボット好きでよかったとつくづく思う。年下のくせに小生意気だけど。
だが主は善良でも余命宣告されてるオレの未来は決して明るくはなかった。
「今日の仕事は班長にもほめられたし、少しは寿命がのびたかな?」
ちょっと浮かれ気味に尋ねると、リズは鼻で笑った。
「前回のがマイナスだから、元に戻っただけじゃない?」
「そうだった……」
途方もなく道のりは険しい。けれど期限を切られているから、のんきにもしていられない。
がっくりと肩を落としたとき、本日二度目の緊急指令が流れた。