異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
「あのさ。もしかしてこの体、サイボーグとか?」
「何言ってるの。自分のこともわからないなんて、どんなプログラム入力されたのよ。あなたは私が作ったヒューマノイド・ロボットでしょ。当然ながら、私がマスターだから」
「はぁ!?」
なんでオレ、ロボットなんかになってんだ? てか、死んだはずだよな。ロボットに転生?
そんな非常識な! いやいや、そもそもさっきのリズのデータによると、ここは日本じゃないみたいだし。クランベール王国ってどこだ?
信じがたい予想の的中にすっかり混乱していると、突然視界が真っ赤に染まった。頭の中ではなく視界の隅に赤い文字が表示される。
警告。思考回路処理容量過負荷。
3経路以上の回路停止を要求。
文字が現れた途端に体が動かなくなった。瞬きすらできない。リズが異変に気づいて顔をのぞき込む。
「落ち着きなさい。一度に感情と思考を爆発させちゃダメ」
そんなこと言われても、次々に襲いかかる想像を超えた事態に、落ち着けるわけがない。
視界の隅で赤い文字が点滅を始める。
わっ、なんかヤバそう。
益々混乱するオレを真っ直ぐ見据えて、リズが厳しい口調で言い放った。
「命令よ。今すぐ人工知能と思考回路を安定させなさい」
そんなこと命令されても……とオレが考えるより先に頭の中の文字が反応していた。
システム干渉命令受信。
声紋パターン確認。一致。
マスターの命令受理。
「了解しました」
わーっ! なに勝手に口走ってんだ、オレ! さらなる混乱を引き起こしたかと思いきや、なぜか気持ちが落ち着いてきた。
思考回路3経路停止。処理容量正常化。
人工知能正常。スタンバイ。
身体制御システム、ロック解除。
気持ちが落ち着くに従って、真っ赤になっていた視界が通常の色彩を取り戻す。そして固まっていた体が動くようになった。
「あ、元に戻った」
思わずつぶやいたオレを見て、リズが大きくため息をもらす。