異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
なんか不安とか緊張を感じるんだが……。誘拐事件に何かトラウマでもあるのかな?
ちょっと気になる。
「シャス……?」
「悪い。ちょっと話しかけないでくれ」
「あ、ごめん」
にべもなく言葉を遮られ、すごすごと引き下がる。なにか触れられたくないことでもあるのだろう。
するとシャスが、相変わらず緊張しているみたいだが、チラリとこちらに苦笑を向けた。
「いや、オレ飛行装置が苦手なんだ」
「え?」
「シーナはなんでもできるからピンと来ないだろうけどオレは習得するのに一ヶ月かかったんだよ」
「はぁ……」
三十分で習得したオレには確かにピンと来ない。人間にとってはそんなに難しいものなんだろうか? バランスを取るのが難しいとは聞いていたが。
ちょっと気になるけど、今聞いてこれ以上集中力を途切れさせては事故ったらヤバいのでやめておく。
シャスの邪魔をしないように班長から指示のあった場所に到着すると、すでにみんなそろっていた。
そこは一般企業が所有する集合住宅の敷地内にある小さな公園で、あまり手入れされているとは言い難い大きな木が枝葉を茂らせている。捜査員が被疑者に悟られないように身を潜めるにはちょうどいいかもしれない。
駆けつけたオレたちを見つけて、フェランドがニヤニヤしながら近づいてきた。なんとなく想像はつく。
フェランドはシャスの肩を抱き寄せておもしろそうに言う。
「シャス、よく墜落せずにやって来れたな」
「オレだって一般道で墜落したことはありませんよ」
ムッとして言い返すシャスをフェランドはなおもからかった。
「シーナにだっこしてもらってもよかったんだぞ」
「いや、それはさすがに飛行重量オーバーです」
「シーナ、まじめに答えなくていいから」
フェランドの言葉を受けて人工知能の計算結果を伝えると、シャスはため息混じりにオレの肩をたたいた。