異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレたちが装備している反重力飛行装置は一人用なのだ。子供や小柄な女性くらいなら一緒に飛ぶことも可能だろうが、大人の男二人はさすがに厳しい。
雑談をしているオレたちを見かねて、ラモット班長が不愉快そうに呼んだ。そろそろ怒られるとは思ったんだ。
「おまえら、無駄口叩いてないで集まれ」
「はい」
みんなが周りに集まると、班長はオレを手招きした。
「そこの建物に潜伏してるらしい。二階の右端だ。シーナ、ちょっと様子を探れ。気取られるな」
「はい。なら、ここからでいいですか?」
「ここからでわかるのか?」
「人がいるかどうかと、いるなら人数くらいはわかります」
「とりあえずは、それだけわかればいい」
「了解しました」
オレは各センサの感度を上げて、班長が示した部屋を検索する。
おかしい。人の気配がない。
部屋の中にはノーマルモデルとバージュモデルのロボットがいるだけだ。
班長から送られた資料によると、見慣れない男が少女を連れて部屋に入るところを、住民から目撃されている。
腑に落ちないが、班長はオレの意見を聞きたいわけではないだろう。検索結果のみを伝える。
「生体反応がありません。ロボットは二体います」
「二体? 仲間がいたのか?」
班長も腑に落ちないようだ。オレも気になる。
どういうことなのか探れという意味に解釈した。
「目視確認します」
オレは飛行装置を作動させて、その場で二階の高さまで飛び上がる。鬱蒼とした枝葉と迫る夕闇が姿を隠してくれるだろう。
大きな木の陰から部屋の中を覗く。やはりそういうことか。
地面に降りたオレは、今見た部屋の様子を班長に報告する。
「中にいるのは若い男と少女です。少女は拉致された令嬢に間違いありません」
「どういうことだ?」
令嬢が人間ではないとなると、誘拐事件ではなく盗難事件になる。対応も変わるだろう。
そもそもさらわれたのは本当に令嬢だったのだろうか。本物の令嬢は別にいて、さらわれたのは伯爵家が用意していた替え玉だったとか。
そうだとしても、班長が何も聞かされていないのはおかしい。