異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
捜査員たちが指示に従ってバラバラと散っていく。部屋のキーがオレに渡されたということは、オレが一番に部屋に入れってことなんだろうけど、グレザックと一緒には無理だ。ここは班長の指示を仰ぐべきだろう。
「班長、最初は私ひとりで部屋に突入します。私が被疑者を確保するまで、グレザックさんには部屋に入ってほしくないんです」
班長はいつにも増して不愉快そうにオレを睨む。
「経験の浅いおまえひとりで、令嬢を守りながら被疑者を確保できるとは思えない。間違えるな。人質の救出が本来の目的で、被疑者の確保は二の次だ」
「私には荷が重すぎるということは重々承知しております。人質が人間なら班長の命令通りに令嬢の身の安全を最優先できます。けれど違うから、ロボットの中に人間のグレザックさんがいると、優先順位が変わってしまうんです。私の意思でこれを変更することはできません」
「……絶対命令か」
班長が忌々しげに舌打ちした。気持ちはわかる。
ほんの少しの間、班長は眉間にしわを寄せたまま考えていたが、おもむろに尋ねた。
「おまえ、勝算はあるのか?」
「九割です。部屋の詳細な見取り図があればもう少し上がります」
相手は内蔵データとプログラムに依存しているノーマルモデルだ。性能はオレの方が遙かに高い。
さっき確認した情報によると、武器は内蔵も所持もしていない。元々空き部屋だったようで、部屋の中には武器になりそうなものどころか何もなかった。
殺風景な部屋の床にふたりは向かい合わせで座っていたのだ。長期間潜伏するつもりはないのかもしれない。
「シーナ、部屋の映像を送るわ」
話を聞いていたリズから、部屋の見取り図が立体映像で送られてきた。
人工知能が先ほど確認した映像と重ね合わせて、人物の位置関係やオレの移動速度などと共に最短の確保手順を計算する。
その結果をオレは班長に告げた。