異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 建物の表へ回って、正面入り口から中へ入る。エントランスホールと建物の要所には監視カメラが設置されているが、犯人はロボットだ。映像を逆に利用されている可能性があるので、管理会社に協力してもらって別の日に撮られた映像と切り替えている。
 住民はすでに避難していて、建物の内部は異様な静けさに包まれていた。あちこちに配置された捜査員が異様さに拍車をかけている。

 オレとグレザックはエレベータ横にある階段で二階に上がった。
 一番奥にある部屋の前まで進み、扉越しに中の様子を確認する。相変わらず生体反応はない。ロボットの数は先ほどと同じ二体。居場所もほとんど変わっていないようだ。

 オレは班長から受け取ったカードキーを取り出し、鍵穴に差し込む前に、もう一度頭の中で手順をシミュレートする。
 今回は人命がかかっている。失敗は絶対に許されない。厳密には”人”じゃないけど。
 鍵が開いたら、その音で被疑者ロボットが気付くはずだ。扉を開けて中に入った後の一瞬が勝負になる。

 瞬時にフルパワーを発揮できるように、あらかじめ全身の筋肉にエネルギーを巡らせる。充分に温まったところで、隣にいるグレザックに視線を送った。
 彼が小さく頷き、オレも頷き返す。そしてカードキーを鍵穴に差し込んだ。

 カチリと小さな音がして鍵が開く。次の瞬間、扉を開けてオレは部屋の中に飛び込んだ。
 入り口からまっすぐ被疑者ロボットの元へ駆け寄り、反応する隙も与えず相手の腕を取りうつ伏せに倒す。そして両腕を背中で拘束した。この間一秒。

 そばで令嬢が悲鳴を上げた。その声に負けないようにオレも大声で呼ぶ。

「グレザックさん!」

 扉が開いて、グレザックが駆け込んできた。泣き叫ぶ令嬢を抱え上げ早足で外へ向かう。
 令嬢がグレザックの肩越しに、オレに取り押さえられているロボットに向かって手を伸ばした。

「やめてぇ! ベレールにひどいことしないでぇ!」
「え?」

 違法ロボットに名前なんてあったんだ。っていうか、知り合い? いったいどういうことなんだ?

 
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