異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 その辺の事情は局で取り調べてもらおう。
 オレはひざと腕で押さえつけていたロボットの手首に手錠をかけた。幸いロボットは取り押さえられてから一切抵抗しない。ちょっとおとなしすぎやしないか?
 不審に思いつつ立たせようとしたが、ぐったりして全身から力が抜けている。

 なに? 破壊した覚えはないぞ。
 フルパワーは走るときに使っただけで、あとは人間の捜査員も使ってる逮捕術で拘束した。その証拠にフルパワーの残り時間は九分五十九秒ある。

 打ち所が悪くて故障したとか、そんなヤワなロボットなのか?
 そんなわけはないと思いつつも故障の原因を探るために、人工知能とメモリの状態を確認する。
 勝手に他のロボットや機械の内部に干渉したり内容の詳細を見たりするのは法律で禁止されているが、状態を確認することはできるのだ。
 人工知能に異常はない。だがメモリの状態を確認した途端、オレは思わず声に出して叫んでいた。

「リズ、記憶領域がものすごい勢いで消去されてる! どうしたらいい!?」

 それを聞いたグレザックが弾かれたように振り返った。彼に抱えられ肩の上から身を乗り出した令嬢が、ロボットに向かって両手を伸ばし、火がついたように泣き叫ぶ。

「いやあぁーっ! ベレールーッ!」

 このままでは、せっかく確保したロボットから人間の被疑者情報を引き出せなくなってしまう。

「リズ、命令してくれ! オレならすぐに消去プログラムを停止できる!」
「だめよ、シーナ。内蔵プログラムへの干渉は法に反することよ。たとえ私が命令してもあなたの中の絶対命令が許さないわ」
「相手は違法ロボットだぞ!? どうせ局に帰ったら中身を調べるんだろ!?」
「それでも、今あなたにできることは、そのロボットを連れて帰ることだけよ」
「……了解」


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