異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


「やっぱり初期のバージュモデルは感情処理に負荷がかかりすぎるわね。それだけ人間っぽいんだけど」

 何を言っているのか、意味不明なんだが。それよりも全裸の男を目の前にして、平然としているこいつの神経を疑う。
 こんな場合大概の女は、悲鳴を上げるとか、せめて目を逸らすとかするんじゃないか?
 あまりに平然としすぎてて、オレの方が気恥ずかしい。

「あの、オレが裸なのは気にならないわけ?」
「別に。元々裸で寝かせてたし。私が作ったんだから、あなたの体なんて産毛の本数から肛門のしわの数まで把握してるもの」
「オレは気になるんだよ。とにかく何か着るものをくれ」
「やれやれね」

 リズはおおげさにため息をつきながら、自分の着ている白衣をぬいでオレによこした。
 こっちがやれやれだ。肛門のしわとか言うな。

 華奢な体だが、さすがに小柄な彼女の白衣は小さすぎる。オレは受け取った白衣を腰に巻いて、そでを帯代わりに結んだ。これで落ち着いて話ができる。
 パンツ代わりは確保できたから、残るは鏡だ。
 要求するとリズは不思議そうに首を傾げた。

「鏡なんて何するの?」
「自分の顔が見たい」
「そんな不必要なこと気にするロボットなんて初めてだわ」

 リズは呆れたようにつぶやきながら、オレが寝ていた診察台の横に移動する。そして壁にあるボタンを押した。
 ボタンの横の壁が鏡面のように変化する。

「全身をスキャンする装置なんだけど、姿が映るからこっち来て」

 手招きに応じて壁の前に立つと、目の前には腰に白衣を巻き付けた今のオレの姿が映っていた。
 色白で中性的な細い手足。肩に届くか届かないかの銀糸のごときサラサラなプラチナブロンドにブルーグレイの瞳。全体的に色素は薄い。
 前世のオレとは似ても似つかない、儚げな外国人少年の姿がそこにあった。
 なんじゃ、この少女マンガのような美少年は! てか、これホントにロボット?

「……これって、リズの趣味?」
「違うわよ!」

 即座に否定した後、リズは微かに頬を染めて気まずそうに付け足す。

「設計図の通りに作ったらそうなったの!」
「ふーん」

 男の裸を見ても平然としてるくせに、照れることもあるんだ。多少は趣味が反映されてるってことなのかな?

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