異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
立て続けに事件が起きるときもあれば、なにごともなく平和な日々が続くこともある。
成果が寿命を決定するオレとしては、あまり平和すぎるとお払い箱決定なので、素直に喜べないところだが。
平和でもお払い箱にならないなら、オレがヒマなのはいいことじゃないかと思うけど。
そういう意味じゃ、医者や消防士や兵士も同じような気分かもしれない。
あれから二日間ヒマが続いているので、国立図書館の蔵書もだいぶ読み進めた。まずは基礎知識習得のために、地理と歴史関係を攻めている。
おかげでクランベールのことは随分と詳しくなった。
リズはいつも通り忙しそうだが、ムートンは今日も相変わらず立体パズルを楽しんでいる。オレはその隣に座って時々彼に話しかけながら、ネットワーク経由で読書をしていた。
平和だ。あくびが出そうなほど平和だ。
「クランベールって平和なんだな。日本なんか毎日警察が出動するような事件が頻繁に発生してるぞ」
「クランベールも発生してるわよ。ここは研究室だから特務捜査二課がらみの通達しか来ないだけ」
「なぁんだ」
確かに他の事件の情報が流れたところで、オレにもリズにもなにもできない。オレたちは特務捜査二課専属なので、二課長の指示がなければ動けないのだ。
ただ、人間の捜査員たちは情報を共有しているので、捜査会議に出席するリズにはそれなりの情報は入ってきたり意見を求められたりということはあるらしい。
「巷じゃどんな事件が起きてんの?」
「そうね、不思議な事件というと、ロボットの連続盗難事件かしら」
「ロボット?」
「バージュモデルばかり何体も盗まれてるらしいわよ。それも新品じゃなくて中古品ばかり」
バージュモデルは精巧な分、値が張る。中古でも売ればかなりな儲けになるだろう。
だが、バージュモデルに限らず、ヒューマノイド・ロボットは出荷時、製造番号を登録管理されているので、盗んだものを売ればすぐにばれてしまうのだ。