異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレがもの言いたげに見つめていたからか、リズは壁のボタンを押して鏡のような装置を停止させると、取り繕うように話題を変えた。
「気が済んだ? で、結局誰がその妙ちくりんな人格形成プログラムを入力したの?」
「オレの人格はプログラムじゃない」
そこははっきりさせておかないと。リズは訝しげに眉をひそめる。
「何を言ってるの? さっそくバグ? 人格形成プログラムなしで裸を恥ずかしがったりするわけないじゃない」
「バグじゃない。体はロボットのようだけど、中身っていうか、意識っていうか、精神は人間なんだ。信じてもらえないかもしれないけど」
相変わらずリズは疑わしげに見つめている。全然信じてないな。
「……そういう仕様なの?」
「だから、そうじゃなくて……」
オレはひとつため息をついて、ここに至る経緯を説明した。さほど驚いたりもせず、リズはオレの話を黙って聞く。そして話を聞き終わった後、小刻みに何度か頷いた。
「なるほどね。あなたの話を信用するなら、あなたは雷に打たれて死亡したニッポン人で、目を覚ましたらその体の中に意識が入っていたと。ようするにプログラムを入力した人はいないのね」
「そう。わかってくれた?」
「ええ。ようするに幽霊が憑依してるってことでしょう? さっさとその体から出てって」
「いや、それどうやったらできるのか教えてほしいんだけど」
だいたい幽霊だって意識ないし、憑依した記憶もない。転生したって思ってたけど違うのか?
死んだ魂が違う体に宿るわけだから、転生でいいんだよな。元々命のない体に宿ったのが間違いだっただけで。
「オレがここにいたら何か問題でもあるの?」
「大いにあるわよ。その体は対ヒューマノイド・ロボット犯罪用のプロトタイプなの。一週間後には実務投入して成果を挙げてもらわなきゃならないんだから」
そういえば、リズは警察関係の研究員だったっけ。