異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


「ほかの店もこんな感じ?」
「だいたいそうよ」
「商品を自分で見て選びたいって人いないの?」
「そういう人のために奥にはちゃんと商品が陳列されてるわ。忙しい人やこだわらない人はあまり利用しないけど。だって欲しいものを探し回ってうろうろするのって大変じゃない」
「まぁ、そうだけど」

 注文コーナーのはずれから角を曲がると、右手にはガラス戸の向こうに商品が陳列されているのが見えた。ちらほらと人影は見えるけど、注文コーナーにいる人の方が圧倒的に多い。
 時間がもったいないってのは、リズだけじゃなくてクランベール人共通の価値観なのかもしれないと思った。

 商品陳列室の前を素通りして突き当たりにある受け渡しコーナーに向かう。そのまま商品を受け取るのかと思ったら、リズはその横にある扉から外へ出た。

「あれ、どこ行くの?」
「向かいの喫茶店のサービス券もらったから、ちょうど二枚あるし、お茶飲んで行こうと思って」

 ニコニコ笑いながらリズは先ほど手にしたカードをヒラヒラと振ってみせる。どうやら三枚の内二枚はサービス券だったらしい。

「珍しい。時間がもったいないんじゃないの?」

 思わず茶化すと、リズは少しムッとしたように反論した。

「だってせっかくのタダ券がもったいないでしょ。次はいつ来れるかわからないんだし」

 目と鼻の先にある商店街に、次にいつ来るかわからないってことの方がどうかしている。どんだけ生活全般に無頓着なんだか。
 ため息をつくオレを横目に、リズはもっともらしい言い訳をする。

「名目上はあなたの社会勉強なんだから、色々経験しておくべきだと思うわよ」
「はいはい。別にイヤなわけじゃないよ」
「なら文句言わないでよね」
「申し訳ありませんでした、ご主人様」

 文句は言ってねーだろ。茶化しただけだし。まぁ、リズにとっては大差ないってことか。

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