異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレはあえてムッとした表情でリズを見下ろした。
「そういう態度かわいくねー。置き去りにされたオレの手がむなしいだろ」
「う……」
照れてるだけだってのは丸わかりだから、本当はちょっとかわいいけど。
リズは唇をかんで上目遣いにオレを睨みながら、叩きつけるようにして自分の手をオレの手に重ねた。
「誤解しないでよね。別にあなたの言いなりになるわけじゃないから。きっちりエスコートしなさい」
なんという絵に描いたようなツンデレ。でも「命令よ」って言わないとこみると、オレに任せるってことでいいのかな。
そういうことなら下僕モードでもかまわない。元々リズには心以外のすべてを掌握されている下僕だし。
オレはリズの手を胸の高さまで掲げて恭しく頭を下げた。
「了解しました。マスター」
しっとりと少し冷たいリズの手を握り、喫茶店に向かう。小柄なリズの手は小さくて、指の付け根が少し堅くなっていた。工具を握って機械いじりをしてるからだろう。
チラリと横を窺うと、よほど照れくさいのか、いつもは小生意気で口の減らないリズが、俯いて押し黙っている。どんだけ免疫がないんだよ。
てか、肛門のしわの数まで把握してるとか言ってた自分の作ったロボット相手に何を照れてるんだか。
思わずクスリと笑みがこぼれる。するとリズがそれを敏感に察知して顔を上げた。
「なに?」
「いや、ちょっとかわいいなと思って」
リズはふてくされたように横を向いてポツリとつぶやく。
「からかわないで」
「わかったよ」
これ以上つつくのもかわいそうなので、オレはそのまま黙って手を引いて喫茶店に入った。