異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 首を傾げるオレの前で、リズはとうとう頭を抱えながらうなり始めた。

「忘れていたわけじゃないのよ。でも私、思い立ったら後先考えずに行動にでちゃう質(たち)だから、私が調べようとしていることをあなたも知りたいだろうと思って、なにも考えずに連れて帰ることにしちゃって……。あぁーっ、軽々しく男を泊めるなんてーっ」

 いやいや、今頃になって思い出したように悩まれても……。

「しかもこんなエロボット」
「こら待て。どさくさに紛れて、誰がエロボットだ」

 人の生理的三大欲求から解脱しているオレを掴まえてなにを言う。

「やっぱり、私ひとりで調べて明日報告するから、あなたは局に戻ってくれない?」
「はぁ!? 二課長に許可までもらっておいて今更なに言ってんだよ。だいいち、この買い物が無駄になるだろ? オレは局の備品なんだから余計な心配してないで、さっさと家に案内しろよ」
「うん……」

 納得はしていないようだが、リズは渋々頷いてまた歩き始めた。

 商店街から一本裏手の通りへ向かって、夕闇の迫る薄暗い路地をリズの後ろについて進む。狭い石畳の路地は表通りとは打って変わって、街灯も少なく人通りもない。ふたりの靴音だけが規則正しく響いていた。

 唐突に頭の中にシステムメッセージが現れた。


 赤外線センサ感知。
 方位、後方10メートル。
 秒速0.5メートルで接近中。


 赤外線? しかも接近中?
 オレに向かって照射してるって、なにを探ってるんだ? いったい何者が?
 振り向けば感付かれて逃げられるだろう。いくら万能ロボットのオレでも、さすがに前を向いたまま後ろは見えない。
 ちょっとリズに協力してもらおう。

「リズ」

 振り向いた彼女をおもむろに抱きしめる。リズは手にしたカバンを取り落とし、オレの腕の中で硬直した。


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