異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
騒がれる前に耳元でこっそりとお願いする。
「赤外線で探られてる。オレの代わりに見て。後ろに誰がいる?」
状況を理解したのか、リズの硬直が緩んだ。オレの両わき腹に腕を回し、シャツを掴んで少し背伸びをしながら肩越しに向こうを見つめる。そしてかすれた声で告げた。
「黒っぽいスーツを着た背の高い男の人。不自然に腕を組んでこっちに歩いてきてる。顔はよく見えないけど若そう。あ……」
「どうした?」
「ごめん。目が合っちゃった。そしたら引き返していったの」
「そうか」
どうやらリズの顔見知りでもなさそうだ。当然ながらオレにも心当たりはない。
赤外線を使ったのは薄暗い路地に入ったからか。いつからつけられてたんだろう。しかも結局何者なのかわからなかった。
気になるけど、今はこれ以上の情報を得ることはできそうにない。
突然、腕をポンポンと叩かれてハッと我に返る。リズが耳元で不愉快そうに告げた。
「ねぇ、いい加減放して欲しいんだけど」
「あ、わりぃ」
腕をほどくと、リズは少し顔をしかめてオレを睨んだ後、路上に転がった自分のカバンを拾った。そして不審者が立ち去った表通りの方をぼんやりと見つめる。
ヤバイ。危ないことに首突っ込んだりする気じゃないだろうな。そんなことで後先考えずに行動するのはやめて欲しい。気を逸らさなきゃ。
「いやぁ、リズって胸でかいから抱き心地いいなぁ」
「なっ……!」
髪を翻してこちらを向いたリズのするどい視線がオレを射抜く。
別の意味でヤバイ。
もうちょっとマシなこと言えなかったのか、オレ。
苦笑に顔をゆがませるオレの鼻先に人差し指を突きつけて、リズは厳しく言い放った。
「このエロボット! シーナ、命令よ! 明日の夜明けまで私の半径一メートル以内は進入禁止! 進入したら罰として全身に一秒間の痛覚レベルプラス三負荷!」
「なんだ、それぇ!?」