異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
リズの後ろをつかず離れず追尾しながら、薄暗くて狭い路地を抜け商店街の裏通りに出た。そこは第二居住地区のメインストリートで石畳の道の真ん中はエアカーやエアバイクが頻繁に行き来している。中央が車道でその両脇は車道よりも幅の広い歩道が、街路樹や花壇で公園のようになっていた。
車道のすぐ脇には所々に二メートルくらいの高さのアーチが設置されている。時折、そのアーチの中に人が入っていくので地下道の入り口かと思ったら、まんまアーチなのだ。地面に穴は空いていない。
入った人はどこへ行ったのかと、あたりを見渡すと、道路の反対側にいるではないか。
オレは少し前を歩いているリズに問いかけた。
「このアーチなに?」
リズはすぐ先にあるアーチに向かって歩きながら、オレを振り返る。
「前に話したことあるでしょ? 時空移動装置よ。エアカーが行き来する道路に設置されてるの。遠距離移動用の装置は移動場所を指定できるけど、これは道路横断用の機能限定版なの。向こうに渡るから後からついてきて」
そう言ってリズは、アーチの内側にあるボタンを押して、オレの目の前から忽然と消えた。
ようするに横断歩道の代わりってことだろうか。横断中によそ見運転の車にはねられる心配がないのはありがたい。
もっともクランベールのエアカーはオートパイロットだから、よそ見をしてても車が勝手に事故を防いでくれるのだが。
道路の向こう側に現れたリズが、こちらを向いてオレに手を振る。オレも軽く手を挙げて、リズと同じように向こう側へ渡った。
どんな仕組みなのかは不明だが、体への負荷は全く感じられない。瞬き一つの間に道路の反対側へ移動していた。
オレがついてきたことを確認して、リズは再び歩き始める。大通りはそのまま行けば、じきに官庁街の通りに出る。その少し手前でリズは通りを外れた。
リズの後について角を曲がると、狭い路地は突き当たりで大きくて真っ黒なものにふさがれていた。
リズは平然とその黒いものに向かって歩いていく。
まさか、あれが家?