異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 食事をしながら、呆気にとられている隙に聞きそびれたことを尋ねてみる。

「リズって植物好きなの?」

 ダイニングにもたくさんの植物が葉を茂らせていて、まるでジャングルの中で食事をしている気分なのだ。続き間になっているリビングも植物で鬱蒼としている。

 一生懸命食事をしていたリズが、手を止めて顔を上げた。
 本当に一生懸命って感じ。いつもサプリだから、スプーンやフォークを使って食事を摂った事がほとんどないのだろう。
 リズはあたりを見回しながら言う。

「あぁ、確かにちょっと伸びすぎちゃってるわね。私じゃなくて大叔母さんが好きだったのよ」
「じゃあ、そのまま今はリズが世話してるの?」
「水も光も栄養も自動で供給されてるから、私は時々邪魔になるところを切るだけよ」
「へぇ」

 それなら納得。自分の食べるものすら無頓着なリズが、これだけ大量の植物を世話してるなんてちょっと意外だったんだ。
 まぁ、無頓着だからこそジャングルになってるんだろうけど。

 リズは再び一生懸命に食事を始める。スプーンやフォークと格闘している姿が、ひとりで食事を摂るようになったばかりの子供みたいで、なんだかかわいい。そのうち箸も教えてやろうかな。
 指摘すると怒られそうなので黙って見守ることにする。

 ふと、彼女の鼻の頭にケチャップがついていることに気づいた。どうやったらそんなとこにつくんだ。
 さすがにこれは指摘しないと。

「リズ、鼻の頭に——」

 何気なくリズの鼻先に手を伸ばした途端、痛みが全身を襲う。

「いてーっ!」

 うっかりしてた。
 手を退いて椅子の背にのけぞるオレを、リズが冷めた目で見つめる。

「なにやってんの、バカね」

 確かにうっかりしてたオレはバカかもしれない。でも鼻の頭にケチャップつけた奴にバカ呼ばわりされたくない。


< 86 / 285 >

この作品をシェア

pagetop