異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレの心の機微を知らないリズは目を輝かせて仮説を披露する。
「その設計図って日付が九十年前になってるでしょう? バージュモデルが正式発表されたのは八十年前だから、その十年も前にバージュ博士は設計図を完成させていたってことなのよ。あなたの体はバージュ博士が設計した第一号のオリジナルモデルが現代によみがえったことと同じなの。すごいと思わない?」
「うん。まぁ……」
なにがどうすごいのかは、正直ピンとこない。九十年前というと、バージュ博士は天才少年時代ってことだから、そう考えると確かにすごいのかも。
「でもなんでそんな昔の設計図をリズの大叔母さんが隠し持ってたんだ?」
「バージュ博士って十八歳の時違法な開発で免職になってるでしょう。そのとき、研究成果や資料は全部科学技術局に没収されたらしいの。少しでも危険な物は廃棄処分されたらしいわ。それを免れるために大叔母さんに託したのかも」
「なるほどね」
とりあえず、一枚目のメモリカードはリズの探しているものではないことがわかった。思わぬ衝撃の事実を垣間見てしまったけど。
「じゃあ、もう一枚の方も確認してみる。そっちはどう?」
「うーん。やっぱり普通の研究データばかりね。あと少しあるから全部見てみるけど」
「了解」
どうやら本命はオレの手にあるもう一枚のようだ。こちらはロックされている。
人間のリズはロックを解除するのに苦労したようだが、コンピュータ頭脳のオレにはそれほど大変なことではない。
人工知能がリズの示した法則に従って、めまぐるしいスピードでパスワードを解析していく。ものの十秒もしないうちにパスワードは特定され、ロックは解除された。