異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
閑話 オムライス・ミッション
自慢じゃないが料理なんかしたことない。記憶にあるのは小学校の調理実習くらいだ。
学生時代は実家にいたので母親が作ってくれていたし、就職して一人暮らしを始めてからは外食かコンビニですませていた。
自分の食事すら作ったことのないオレが、他人の食事を作ろうと一念発起するほど、地球人のオレから見ればリズの食事は酷い。
いつもサプリですませてるので近所に食べるところがないのかと思えば、局内に食堂がちゃんとあるのだ。局を出て少し行けば、初仕事で出動した商店街もある。
実際に他の局員たちは、時々商店街まで足を延ばして食事を摂っているらしい。
リズがサプリしか摂らないのは「時間がもったいない」という極端な価値観のせいなのだ。
以前食事の話をしたとき「作ってくれたら食べる」と言っていたので、普通の食事のおいしさと楽しさを思い出してもらうためにもオレがなんとかしようと思った。
本当はこっそり練習して驚かせてやりたいところだが、オレはリズに隠し事ができない。
研究室から出るのもリズの許可がいるし、ひとりで行動しているときは、オレのしたこと、見ているもの、聞いていること、話したこと、通信内容は、すべてリズにモニタリングされている。
なにしろ国家警察局の備品だから、勝手な行動は許されないのだ。
今日も研究室から出るため、きちんと理由を説明して許可をもらった。隠すこともできないのでリズの好みも聞いてある。
このところオレが出動するような事件もなくヒマなので、人間らしさを学ぶためとして許可がおりた。