異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
研究室を出たオレはまっすぐ特務捜査二課に向かう。事務室に併設された給湯室は、簡易キッチンにもなっていた。そしてお茶を淹れるのが得意な庶務ロボットのロティは、料理もできると聞いている。オレの師匠になってもらうことで了承を得ていた。
「お疲れさまでーす」
声をかけて事務室の扉を開けると、席について退屈そうにお茶をすすっていたフェランドがこちらを向いた。
オレがヒマだということは、特務捜査二課もたいがいヒマなのだ。二課長とラモット班長は席空きのようだが。
フェランドはニヤニヤ笑いながら、今は特に必要としていない情報を提供してくれる。
「おぅ、シーナ。シャスなら飛行装置の訓練場に行ってるぞ。ヒマならコツを教えてやってくれ」
コツと言われても、体内のジャイロスコープと人工知能が体の傾きを感知して瞬時に補正しているオレには、人間がどうやってバランスを取るのかよくわからない。
シャスを手助けしたいのは山々だが、今日の目的は別にある。オレは頭をかきながらフェランドに苦笑を返した。
「いや、今日はロティに用事があって」
するとフェランドは益々ニヤニヤしながら言う。
「なんだ、おまえらいつの間にそういう仲になったんだ?」
「え?」
フェランドが何を勘ぐっているのか容易に想像はできるが、ロボットとしてどう反応していいのかわからない。
感情が豊かなバージュモデルとはいえ、恋愛感情なんてあるんだろうか。特定の個人に対する好意の尺度はあるようだが、それが恋愛感情に発展することがあるのかどうか、オレは知らない。