異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました
オレとロティが同時に挨拶をしたとき、シャスのはるか後ろからフェランドのからかうような声が聞こえてきた。
「おーい、シャス。ふたりの愛の営みを邪魔しちゃダメだろ」
「え? そうなのか? 悪い!」
「いや、ぜんぜんそうじゃないから! 変な気を遣わなくていいよ」
フェランドの言葉を真に受けて慌てて立ち去ろうとするシャスの腕を捕まえてオレは引き留める。
オレたちがゴタゴタしている間にマイペースなロティはてきぱきとお茶を淹れてシャスの前に差し出した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。で、結局おまえらなにやってんの?」
オレはここに至るまでの経緯をシャスに説明した。シャスはシンク横に並んだ材料を見つめてロティに要求する。
「どんな料理か見せて」
「はい」
ロティがシャスの前にのばした手のひらの上に、オレが送ったオムライスのイメージがホログラムとなって現れた。
ラグビーボール状に整えられたチキンライスを薄焼き卵で包んでトマトケチャップのかかった一般家庭のオムライスを凝視してシャスがポツリとつぶやく。
「これ、卵の下はどうなってんのかな」
「あ、こんな感じ」
オレはチキンライスのイメージをホログラムに変換してロティと同じように手のひらの上に表示する。ふたつのホログラムに何度か視線を行き来させて、シャスは大きく頷いた。
「うん。これならそんなに難しいものじゃないな。オレが作ってやるよ」
「え、マジ?」
「あぁ。ロティ手伝ってくれるか?」
「はい」
「シーナはできないんだよな? 味はおまえが知ってんのか?」
「うん」
「じゃあ、シーナは味見係な。作り方を覚えたいならしっかりデータを記録しろよ」
「うん」
思いがけない助っ人に光明が見えてきた。ていうか、シャスの意外な特技に少し驚く。