28才の初恋
 取引先からであるならば、私が電話を替わらないといけない可能性もある。
 それに備えて湯呑みをデスクの上に置く。

 電話を受けている小島の表情が少し曇っているのが分かる。
 取引先からのクレームであろうか?
 だとすれば、電話が私に回ってくる確率はかなり高い。
 大樹クンのお茶によって、リラックスしていた気持ちの中に緊張が走る――。

「課長ぉ、お電話です。『恒久ハンドショップ』の桃代部長さんからです」

 小島の口から出たのは、営業二課の大きな取引先だった。
 大都市に雑貨を取り扱うビルを幾つも所有している、かなり大きな企業である。
 営業二課はそこに海外から輸入した雑貨を卸している。

 しかし、この会社との取引は順調なはず。
 今までも大きなトラブルは一度も起こったことはない。
 
……何か問題があったのだろうか?
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