28才の初恋
「申し訳ありません!」

 原因は分かった。
 すぐさま電話の保留を解除し、電話越しとはいえ桃代部長に謝罪する。

 しかし、私が謝罪してみせたところで……桃代部長の怒りは収まるものではなかった。

「もう、イズミ商事さんとの取引は終わりにさせてもらう!」

 その怒りの声と共に、電話は叩き切られてしまった。
 コトの重大さに気が付き、私の正面に来ていた橋本が首尾を問うような視線を送ってくる。
 それに対して、目を伏せて首を横に振ることしか出来ない。

 一つの商品を他よりも高い値段で卸していたとはいえ、『恒久』はイズミ商事のお得意様である。
 その取引を失ってしまえば……会社にどれだけの損失が生まれるか計り知れない。
< 128 / 518 >

この作品をシェア

pagetop