28才の初恋

3-6

「はい、桃代部長にお会いすることは出来たんですが……」

 厳しい口調である。
 何とか面会までは漕ぎ着けたが……謝罪に関しては上手く行かなかった、ということだろうか?

 この時間まで掛かってしまったのは予約なしの訪問だった、ということもあるだろう。
 しかし、そこを乗り越えて、面会出来たというのにも関わらず、電話越しに聞こえる彼の声に明るさを感じられないということは……大樹クンからすれば事態は好転していないのではないか、という推論が成り立つ。

「謝罪は……失敗だったの?」

 先が気になり、大樹クンに尋ねる。
 だが、大樹クンはすぐには返答しない。
 やはり……答えにくいような状況になってしまったのであろうか?

 もし、今回が失敗だったとしても、全然気にしなくて良いんだからねっ!
 大樹クンは頑張ったよ!
 上手く行かないのは……桃代部長が悪い!
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