28才の初恋
 その言葉を最後に、大樹クンとの電話は終了した。
 受話器を置きながら、私はため息を一つ。

 そのまま帰り支度を整えてオフィスを後にする。
 明日からは桃代部長への対策のためにしばらくは忙しい日が続くだろう。
 しかし、不思議と私の中にはそれに対して面倒臭いというような感情はなく、やりがいのようなものを感じていた。

 それは、元々こういった仕事を苦にしないという面があるとは思うが、それ以上に……大樹クンの役に立てる!!という気持ちが強いからだということを、私は自分でも分かっていた。

「私こそ……ありがと!」

 オフィスから出て、誰もいない夜空に向かって小さくそう呟いた。
 暗い夜空に、大樹クンが微笑んでいるような幻が見える。

……ああー、幻まで爽やかなんて反則だ。
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