28才の初恋
 幸い道が渋滞しているということも無く、何の問題も起こらずに予定時刻の二十分前には目的地に到着した。

 現在は近隣にある駐車場に車を入れようとしているところである。
 助手席のシートに片手を掛け、バックするために後ろを振り向いている大樹クンの顔にドキドキする。
 ドキドキして……そのまま襲い掛かりたい衝動と必死に戦っている。

 あと二十分もあるんだから……ちょっとくらい、軽く肉体関係を結んだところで間に合うんじゃない?
 ホラ、リラックスにも繋がるし。

 そんな邪なことを考えて、ブラウスの一番上のボタンを外して胸元を強調してみたり。
 脚を少し開いて、パンツが見えそうな格好をしてみたりしてみたが……撃沈した。

 うーん、まるで見ようとする姿勢が垣間見えない。まあ、取引先への謝罪に出ているのだから、そんなことに気が回るわけもないのだろうけど。
 
……ちょっとだけ自尊心が傷つく。
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