28才の初恋
 駐車場に車を停め終わり、それでもまだ訪問まで時間が余ってしまった。
 近くのコンビニでコーヒーを買って、少しだけ時間を潰すことにする。

「桃代部長、話を聞いてくれれば良いんですけどね……」

 心配そうな顔で大樹くんが呟く。
 まあ、無理もない。
 当事者なりに責任を感じている部分もあるだろうし……早く解決して楽にしてあげたいところだ。

「大丈夫よ――」

 ヘタに励ますよりは、そう思い短い言葉で大樹クンの心配を否定しておく。
 こうやって面会の約束まで取り付けてしまえば、問題はほとんど解決しているのも同然なのだ。

 後は相手の気が済むまで、とことんまでご機嫌とりに徹しないといけないだけだ。
 きっとこの先の展開としては……説教されて、それでも相手をなだめ透かして。
 それから接待をして、思ってもいないような言葉を使ってわざとらしい態度でおだてて……ああ、サラリーマン生活の中でもそれが正直、かなり面倒臭い。
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