28才の初恋
「――だから、私としてはだね。今まで通りに取引したいと言うなら……君たちの誠意を見せてもらいたいだけなんだよ」

 このセリフを引き出すまでに三時間。
 話は全然手短には終わらなかった。

 まずはこちらの不備を責める言葉が延々と続き、続いては私の身体的、精神的な特徴をネチネチと愚痴る言葉が続く。
 世間的には『セクハラ』とか『パワハラ』などの名称で呼ばれる部類の言葉である。
 この時点で四、五回ほど絞め殺してやろうかという衝動に襲われたのだが……そこをグッと耐えて。

 それから取引を再開してくれるのであれば商品の卸価格を引き下げる事を検討させてもらうというこちらの最大限の条件を説明した。
 これはウチの会社からしてみれば破格の、これ以下の金額で取引すれば損が出てしまうギリギリのラインのものである。

 普通の取引先であれば、この条件を提示されればスンナリと取引は再開であろうほどの破格の条件なのだが……ここで前述のセリフである。
 つまり、予想通りに『自分を接待しろ』ということだ。本気でこのオヤジを吊るしてやりたい気分だ。
 弱味を握られてしまっている身としては、それさえ出来ないのが悔しい。
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