28才の初恋
 ハラワタが煮えくりかえる思いを、無理矢理に抑えながら。顔は必死で明るい笑顔を作る。

「それはもう……お任せください!」

 具体的に何をする、といったことは言わない。
 長い付き合いなので、このオッサンがどういう事が好きなのかは知っているし、接待の誘いというのはこういうものだ。
 こちらがお膳立てをして、相手の機嫌を取れるまでひたすらアチコチに連れ回す。
 接待する側としては何も楽しくは無いんだけど、それでされる側の虚栄心みたいなもんは満たされる、といった具合である。

 ここまでくれば、今回の事件は解決したも同然である。
 後は接待で桃代部長の機嫌を損ねなければ良いだけの話だ、相手をひたすら持ち上げる接待で機嫌を損ねるということはまず発生しない。

 これからは、やりたくも無い接待のおかげで私のストレスが溜まるだけだ。

 マージャンやって、キャバクラ行って。
 釣りに誘って、高級クラブに行って……。
 私が男だったらもっと楽しめるだろうけど。
< 168 / 518 >

この作品をシェア

pagetop