28才の初恋
「あ、あれれれ? 勝っちゃいましたね……アハハハハ……」

 コトの始まりはオーラス。
 最後の局で桃代部長が言い出したことだ。

 その時点まで順調に勝っていた桃代部長、きっと気分が大きくなっていたのだろう。
 こんなことを口にした。

「この局だけレートを上げようか」

 まあ、接待マージャンなのだ。普通に考えれば桃代部長が負けることはない。
 その辺りも折り込み済みで、もう少し小遣いを寄こせということである。
 機嫌を取るために開かれているマージャン大会であるし、心の中で『このクソ親父め』と毒付きはしてみたがスグに了解した。

 時間も時間になっていたし、ここで私たちが負けて、桃代部長はマージャンに勝って、それなりのお小遣いも手に入れてホクホクの気持ちで家路に就く、それで今夜の接待はひとまず成功……の予定だったのだが。

――あれ?なんでこんな事になってるんだ?
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