28才の初恋
 桃代部長は、ここぞとばかりに水を得た魚のようによく喋る。
 私の背が低いのが気に入らないとか、瞳がもっと切れ長の女が好みなのに、だとか。
 完全に言いがかりだとは思うのだが……それでも我慢しなければいけないのがサラリーマンのツラいところだ。

 桃代部長のワンマンショーに、テーブルに居る人間全員の空気が凍り付いている。
 みんな俯いて、誰も言葉を挟めない。

 チラチラとこちらの様子を全員が窺っているが、それでもフォローを入れることはしない。
 それが『接待』というものだからだ。

 主賓である桃代部長の気分が全てなのだ。
 ここで私へのフォローを入れることは許されない行動なのだ。

 そんな空気が、桃代部長の弁舌をさらに加速させる。
 いつまでも続くかと思われるほど、私への誹謗が続いたのだが……その流れを、いきなり断ち切る人物が出てしまった!
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