28才の初恋
「だ、大成功……ですよね?」

 桃代部長を乗せたタクシーが視界から消えると同時に、大樹クンがそう呟いた。
 う、うん……たぶん成功した、と……思う。

 桃代部長から、ちゃんと言質を取ったわけだし、帰り際の様子からすれば……これから取引で不利になるようなことは起こらないだろう。
 大樹クンに頷いてみせる。

「あの……スイマセンでした」

 大樹クンがいきなり謝ってくる。
 接待は成功したのに、何を謝るのだろうか?
 というか、私ってやっぱり大樹クンには『怖い女』と思われているのだろうか?
 謝られてばっかりのような気がする。

「うん? どうしたの?」

 少しでも『怖い女』のイメージを払拭するために、出来る限り可愛い声で聞き返してみる。
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