28才の初恋
 私の可愛く見せようとした仕草に、一瞬ではあるが大樹クンの表情が固まる……うう、イメージ回復作戦は失敗か……。

「その……さっき桃代部長に口答えを……」

 大樹クンの答えに、やっと謝ってくる理由を思い出した。
 そういえば……そうだっけ!
 大樹クンの言葉を思い出して、自分の顔が熱くなるのが分かった。

――『お、俺の憧れなんです……』

 大樹クンの言葉が、私の中でフラッシュバックのように再生される。
 いつでも聞き直すことが出来るように、ICレコーダーに録音しておきたいくらいに嬉しい言葉だ。

「い、良いのよ。結果はうまくいったんだから……!」

 しかし、私が返せたのはこの照れ隠しを含んだ言葉だ。『憧れの女性』、その言葉が何度も頭の中を駆け巡る。
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