28才の初恋

4-9

「そ、その……コレは……あのっ!」

 大樹クンの顔をまともに見れずに、顔を真っ赤にして言い訳を必死に考える。
 手を握りたかったのは確かなのだけれど、握った後のことをまるで考えていなかった。
 いきなり手を握った大樹クンは、私のことをどう思っただろうか?
 そして、こうやって手を握り返してくれたということは……期待しても良いのだろうか?

「どうか……しましたか?」

 私の方に視線は向けず、前を向いたままで大樹クンが言う。
 まるで、何も変わったことは無いと言わんばかりに。
 でも……手は握ってくれたままだ。

「その……ううん。何でもない」

 大樹クンの手を再び握り返して、俯いたまま並んで歩く。
 顔が熱くて、まともに顔を上げられない。
 そうやって歩くうちに……彼が口を開いた。
< 221 / 518 >

この作品をシェア

pagetop