28才の初恋
 いや、別に大樹クンの頼みとあれば休日なんていくらでも返上して構わないよ!
 大樹クンがやれと言うならば、『ブラジルまで言ってコーラ一本買って来い』という命令でも素直に実行しても良い!

「うん? どうしたの? 急ぎの仕事は無かったと思ったんだけど……?」

――大樹クンの話はこういうものだった。

 先ほどの出来事である。
 私と同じく、休日で自室に居た大樹クン。
 携帯に取引先である『アルファ文具店』から電話が架かってきた。
 その用件は、『急ぎで悪いのだけど、週明けに納品して欲しい商品がある』という良くある話である。

 しかし、それを週明けに納品するためには、少なくとも明日の夕方までにはメーカーにFAXを送らないといけない。
 そして、その発注書に私の認め印が必要になるのでお願いしたい……ということだ。

 なーんだ、お安い御用だよ!ハンコくらい。
 
――何なら……一緒に婚姻届にも認め印を押そうか?
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