28才の初恋

5-5

 残るはトイレと玄関だ。
 玄関は最後にチャチャっと掃除すれば良いとして、トイレを片付けてしまおう。

 ここは普段から使用しているので、そこまでは汚れていない。せいぜい、中に散らかっている雑誌をまとめて、汚れをこすり落とせば良い……だけのはずだったのだが。

 便器のフタを開けた瞬間に目が合った。
 さっきの紫の謎の物体と。
 流しから逃げ出して、配管を伝って便器までやって来たのだろう。
 流動体のくせに『ヤレヤレ』と言いたげな雰囲気を醸し出しつつ、便器の中で寛いでいた。

――ヤバイ!襲われるか!?

 と、身構えたのだが……心配はいらなかった。私の姿を見る(?)と同時に、便器の奥へ逃げ込んで行った。

 この先、このマンションに『紫の妖怪』が出るという都市伝説が広まるのだが……それはまた別の話で。
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